ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?


『アビシニアン』は猫だったので、今度は犬の話を。
犬と、あと戦争の話です。
第二次大戦の中、日本軍に取り残された4匹の犬。
初めは一つの島にいたたった4匹の犬が、繁殖し、移動し、木の根のように世界中に広がっていく様を時代と供に語ってくれます。
20世紀はNHK的に言うと「戦争の世紀」。
第二次大戦以後も朝鮮戦争ベトナム戦争、アフガン戦争と目白押しの中、人間のパートナーと言われる犬はもちろん巻き込まれていきます。
軍用犬やら愛玩犬やら犬橇犬やら野良犬やら宇宙に飛ぶ犬やら、各地に拡がった犬達が見せる様々な生き様死に様は、実際泣けます。


ところで、『アビシニアン』で猫と一体となる少女が出てきましたが、この『ベルカ〜』でも犬と一体になる少女が出てきます。
何かと一体となって、それまでとは違うものになるというのは、古川日出男作品の共通テーマなんでしょうか。

沈黙

沈黙

沈黙


MISAGOさんから『アビシニアン』と繋がっていると教えてもらったので、読んでみました。
なるほど、あちらで登場した保健所襲撃お姉さんが主人公。
『アビシニアン』は五感を強く感じさせる作品でしたが、
こちらは五感の中でも「音」。「音楽」に焦点を絞った作品です。


ちなみに、「音楽」と同時に「悪」も大きなテーマなのですが、どうもこの「悪」のあり方が、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』に登場するワタヤノボルという人物とダブりました。