『哀愁の町に霧が降るのだ』

哀愁の町に霧が降るのだ〈下巻〉 (新潮文庫)

哀愁の町に霧が降るのだ〈下巻〉 (新潮文庫)

新橋烏森口青春篇 (新潮文庫)

新橋烏森口青春篇 (新潮文庫)

最近、椎名誠私小説が面白い。
サラリーマンになって数年が経った今読んでよかった小説だと思う。
学生時代に読んだら、文章の面白さは分かっても、それ以外のよさは分からなかっただろうし。

下宿にみんなで集まって中身が無茶苦茶な鍋を食って寝込むまで酒を飲むところとか、
夜中に会社の屋上で賭博やって早朝にこそこそと飯を食いに行くところとか、
会社の先輩がいろんな事情と行き先を持ってやめていくところとか、
羅列してしまえば、いかにもありそうでオヤジ臭いエピソードだけど、その実、ひそかにカッコよさやら郷愁やらが混じっていて、「いい日々だったんだなぁ」としみじみと感じ入ってしまう。
1970〜80年代というのは資料的には随分違い時代なんだけど、自分個人の視点から言えば産まれていないか幼すぎて覚えていないかで実感というものは全然まったく持っていない。電車もビルもテレビもあるんだけど、どんな風に人が生きてたのか、ってのは実は良く分からない。なので、この日々の空気が、時代的なものなのか、椎名誠だからできたのか、或いは椎名誠私小説だからこうなっているのか、は分からない。
けれど、その時その場所にこういう生活があったのだと想像するだけで、そののどかさと余裕に憧れを持つ。

青春小説としてなら『哀愁の町に霧が降るのだ(上・下巻)』
サラリーマン小説としてなら『新橋烏森口青春篇』
起業小説としてなら『本の雑誌血風録』

が、オススメ。

粘膜戦士

粘膜戦士 (角川ホラー文庫)

粘膜戦士 (角川ホラー文庫)

これまでの「粘膜」シリーズで登場した狂キャラ達がちらほら登場する短編集。
出てくる人物はひたすらアッパー系のキ●ガイだかりだけど、話自体はどれも巧くまとめようとしている感じで案外作者は真面目な性格なのかもしれないと、読みながらふと思ってしまった。
五篇収録されている中で、お勧めは「鉄血」と「石榴」。飴村作品における「面白さ」というものは、どれだけその中の登場人物がアレかということのみで測られるものなので、とどつまりこの二つの作品の登場人物が本書の中でひときわ禍々しく輝いているということなのであります。
あと、2、3冊出たら「飴村キャラ最狂決定談義」とかできるようになるな。

UN-GO 因果論

UN?GO 因果論 (ハヤカワ文庫JA)

UN?GO 因果論 (ハヤカワ文庫JA)


映画版のノベライズ。
文章になっているおかげで登場人物の心象描写が細かくてキャラに新たな発見がある。
アニメ版だとあんなに唐突だった速水の泉ちゃんへの思慕とか、梨江お嬢のあほの子ぶりとか、動画じゃなかなか描けないよね。
アニメ版の「UN-GO」の、そういう説明不足な間の抜けた感じも好きなんだけどね。
加えて、JJシステムの発展や、「戦争」の顛末、因果と別天王の能力等々、設定の部分もかなり整理されていて理解しやすい。アニメの中でよくわからなかった部分を補完するうえでも読み応えがあった。理想的なノベライズのように思う。

この調子でBD1巻ごとに収録された話のノベライズなんかが付いてきたら最高なんだけど、そんな曲劇みたいなこと今日び西尾維新ぐらいしか出来ないか。

3月の1

UN-GO 因果論」會川昇/著 坂口安吾/原案 ハヤカワJA 840円
映画版のノベライズ。このサイズ、この表紙、まるで徳間デュアルじゃないか。

めだかボックス 14巻」暁月あきら/漫画 西尾維新/原案 420円
同人誌の時はこの絵は最高にエロかったんだけど、なんでだろうか「めだか」は全然エロくない。
頬を染めながら汗かいたりするシーンが無いからかな。

「レッド 6巻」山本直樹 イブニングKCDX 1010円
こいつが本棚を占領していくにつれ、人にあまり見せられないなぁという思いが強くなっていく。
僕が何か犯罪を犯してしまったら、TVは真っ先にこれが部屋にあったことを流してほしい。

テルマエ・ロマエ ?」 ヤマザキマリ BEAMCOMIX 714円
テルマエ・ロマエ ?」 ヤマザキマリ BEAMCOMIX 714円
テルマエ・ロマエ ?」 ヤマザキマリ BEAMCOMIX 714円
映画もやるし、一気に読む。アニメ版のあのEDはとても好きです。

計4412円で、今月の予算残はあと5588円也。
今月から月始めに10000円分の図書カードを購入して、それを使い切る形式に変えたところ、残が減る減る。財布から現金が消える感触がないというのは、こんなにも買い物を気軽にさせてしまうものなのか。カードはやっぱり怖い。

2月の分

今月はなにやら忙しくて日記を書けなかったけど、本はきちんと買っている。

文芸春秋 3月号』文芸春秋 890円
田中さんと円城さんの単行本の売上の差は、正直、担当者も含めて泣いていいと思うな。同じ芥川賞だってのに。


『ミステリマガジン 4月号』 早川書房 920円
ミルキィホームズ特集」なんて企画をやってたもんだから思わず・・・いつもと表紙のイメージが違いすぎる。
この前は「UN−GO特集」とかもやってたし、ミステリィマガジンは随分アグレッシブだな。
SFマガジンも「モーパイ特集」とか「シュタゲ特集」とかやればいいのに。


本の雑誌 3月 早春みりん干し号』本の雑誌社 680円


『SFが読みたい!2012年版』 SFマガジン編集部編 788円


草津伊香保・四万 (楽楽)』 JTBパブリッシング 924円
先日、伊香保温泉に行って来た。
昔は温泉入った後コンパニオンとけしからんことをする場所だったと両親が教えてくれたが、見た限り置屋もストリップ小屋もなかったし、勿論この健全なガイドブックにそんな情報は載っていない。


『粘膜戦士』 角川ホラー文庫 620円
「粘膜」シリーズ第4弾。とりあえずどこまでも付いていこうと思う。


『窓鴉 式貴士抒情短編コレクション』 式貴士 光文社文庫 700円


『黒笑小説』 東野圭吾 集英社文庫 580円
『歪笑小説』 東野圭吾 集英社文庫 650円
文芸出版界を舞台にした風刺小説。
作家業も編集業も文学賞もみんなビジネス。
目指している人は一回読んどいた方がいい。過剰ではあるが嘘ではないと思う。


よいこの黙示録 2』 青山景 イブニングKC 570円
青山景の遺稿。小学校を舞台に子ども達が作る新興宗教ってテーマは面白そうだったので作者の自殺は非常に残念。


『ロボット残党兵 零』横尾公敏 リュウコミックス 620円
前日譚ではなくアナザーストーリー。ロボット残党兵たちによる地獄の黙示録
本編よりも日の丸人たちの内面に目を向けた話になっている。人にも兵器にもなれない日の丸人たちの苦悩。


『25時のバカンス 市川春子作品集〈2〉』 市川春子 620円
SF+異形+近親相姦=ユートピア


『百器徒然袋 鳴釜   薔薇十字探偵の憂鬱』 志水アキ 怪COMIC 609円


弱虫ペダル 21』 渡辺航 少年チャンピオンKC 440円 


『少女奇談まこら 3 完全版』平野 俊貴 阿部 洋一  電撃ジャパンコミックス 599円


の、15冊で計10210円也。
新刊で買っていけばもったいなくてそっちから読むかなと思っていたのだけど、今月は何故か古本で買った椎名誠にはまってしまいそればかり読んでいた。やはり、その時の自分の流行は金を払ったぐらいでは変わらないらしい。

シブミ

シブミ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

シブミ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

シブミ〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

シブミ〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)


上巻は最高。多分舞台が大戦下の上海・日本なせい。
下巻はなんだか。多分舞台が大戦下の上海・日本じゃないせい。


そして、やたらとあるSEXの描写はなんでこれついてるんだろ。
これが書かれた当時のスパイ小説とかって、SEX描写が欠かせないものだったんだろうか。
ヘルの性技巧が物凄いってのは十分つたわって来るんだけど、そこにエロさは全く感じない。
彼が体得した日本の観念「シブミ」や、あらゆるものを武器にする<裸‐殺>と同列で、あくまで彼の持つステータスの一種としての表現なのかな。

1月の5

今月最後の新刊買い。
『深泥丘奇談・続』綾辻行人 メディアファクトリー 1659円(税込)
そういえば買っていなかった。
カバー、トビラ、表紙に至るまで、なんかもう、祖父江慎全開って感じ。作る側からしたら読み易さとか必要性とか考えちゃうし、こういう装丁ってのはよくないってされるんだろうけど、やっぱりこのぱっと見の派手さとか他と違う感じっていうのは、書店で並んでいて映えるよね。開いてみても楽しいし。
これだけやっておいて、価格が2000円にいかないとは凄い。

そして、これにて今月の新刊予算10000円を達成。
細かく言うなら、1月は10159円使ったことになる。
やってみると、こうやってきちっといくらまで使うって決めておくのは、書店でうだうだ悩まなくて済むし、いつもと違う本にも手が伸びるから案外いいものだ。
来月からもしっかり続けていこう。