蠱猫 人工憑霊蠱猫01

 化野燐著 講談社ノベルス
なんだか気になって一気に読んでしまいました。ずっと海外作家の本を読んでいると、時々無性に日本人作家のライトノベル風の作品を読みたくなるときがあります。やはり、長い間読んできたものっていうのは文章やら構成やらに脳みそがなれていて、出来如何に関わらず読んでいて楽なんですよね。
まぁ、そんなことはとにかくとしてこの本のことを書かなければ。「妖怪でポケモン」という先輩からの説明からかなり軽い雰囲気の作品かと思っていたんですが、さすがは京極と同じ妖怪文人、やっていることは電撃などの作品によくある戦闘ものなのに、京極ばりの妖怪うんちくと独特の暗さをもって一線を画しています。読んでいてどんどん飛び出す妖怪ワード、うら若い大学生四人組がかっての新井白石井上円了がしていたようなトークを普通にしているのは違和感を通り越して、これが妖怪学会や水木しげるファンクラブの会話なのか、と妙な感想というか感動がわいてきます。そして、作中に出てくる幻想的な情景がいいです。ただ、怖かったり気持ちが悪かったりするのではなくて、日本土着の禁忌の感覚を揺さぶる「見てはいけないもの」をとても上手く描いています。おまけに京極の書いているミステリーという枠ではなく、ある意味ではよりなんでもありなアクションものという枠で書いているので、そういうイメージを登場させやすいんですね。ちょっと話の面で詰め込みすぎなところもありますが、欠点を補って余りある楽しい作品でした。続き物みたいなので次巻にも期待。