SFセミナー

に行ってきました。僕は今回初の参加でしたが、昼の部に加えて、奮発して夜の部にも出てきました。前日に神保町に行ったばかりだというのに我ながら無茶をしたものです。結局、帰りの電車代にも事欠いて、夜の部の会場になっていた東大前の旅館から、歩いて定期のある岩本町まで歩くはめになってしまいました。あぁ、足が痛い・・・。
でも、参加したことは非常に有意義でした。昼の部・夜の部あわせると6つの企画をみましたが、全て書くのはきついので、その中でも面白かった企画をいくつか選んで書いておきます。
まず、翻訳家の中村融氏や作家の朝暮三文氏、SF研究家の牧眞司氏が出演した「異色作家を語る」の企画です。最近、というかSFを読みはじめた当初からスペースオペラやハードSFなどの「これぞSF」といった感じの作品より、ライバーやブラウンといった主流からは少しずれたところにいわゆる「異色作家」に惹かれていた僕にとっては、まさにピッタリな企画です。まず、出演者3人がおのおの偏愛する異色作家の短編集を20冊づつあげていました。中にはブラウンやライバー、ビッスン、スタージョンなど読んだことのある作家の作品もありましたが、ガルシア=マルケスやジョン・コリアなど名前と代表作くらいしか知らない作家もいましたし、ドナルド・バーセルミエリック・マコーマックなど名前も知らなかった作家もかなりありました。うれしいことに知らない作家に限って出演者の方がよくしゃべってくれましたし、紹介される作品がどれも面白そうで・・・いやぁ、これでこそきた甲斐があったというものです。また、予想外のこともありました。中村融氏がテリー・ビッスンについて語った時のことなのですが、「日本人は100人に1人もビッスンのことを理解していない!」とのことで先生は怒っていました。先生が言っていたのは最近出た奇想コレクションの『ふたりジャネット』のことで、怒るだけでなく同時にこの短編集に収録されていた作品の何たるかを教えてくれました。怒っていてもさすが翻訳家先生、聞いてみると、なるほどそういう話だったのか、と納得させられました。僕はビッスンの作品を読んだときにはそこに描かれていた魔法のような不思議な出来事にはあまり深い意味は見出せなかったため、単にその不思議な味わいを出すために加えられたエッセンスだと考えていたんですが、読み方によっては不思議にも不思議なりに説明がつくものなんですね。僕はビッスンを好きな作家に上げていながら、中村先生のような読み方は出来ていませんでしたね。やはり、翻訳家はすごいなぁ。
つぎに、「SFファンのお引越し」という企画ですかね。僕は始まる前までこの企画はSFファンがSFを足がかりとして次にどんな本を読み始めたらいいのか、という感じの企画だと勘違いしていたんですが、本当は文字どおりSFファンが実際に引越しをしたときの体験談を紹介するという内容でした。老いも若きもSFファンの悩みは変わらないらしく話の中心となっていたのは、その膨大な蔵書・資料をどうやって運び保存するのか?でした。僕も蔵書が着々と増えていますから、その保管場所にはよく頭を悩ませているんですが、SFの専門家になってもその悩みって同じなんですね。もっとも、規模がまったく違うんですけどね。僕の蔵書など全て合わせたところでせいぜいダンボール5、6箱分くらいしかないと思いますが、体験談を語ってくれた方々は多い人でなんとダンボール250箱分だというじゃありませんか。いったい何トンあるんでしょうかね。しかも、その方、引越し前に住んでいたマンションでは本がありすぎて本棚から本があふれて廊下や靴棚やキッチンの水周りまで本が置いてあったそうです。その人だけでなく他の出演者の2人もほんとに本重視な生活をしているんですよね。引越しの目的が本の保管場所の確保だったり。趣味も行き過ぎるととんでもないところまで行ってしまう、たとえ一冊は小さな本でも集まれば脅威だとつくづく感じました。僕も気をつけねば・・・。
で、最後に夜の部の企画の一つ「最強の文学」ですね。圧倒的なインパクトのこのタイトル、やることは上記の「異色作家〜」と変わらず、出演者が本を選んで紹介する、というものですが、なにしろタイトルが「最強の文学」です。気になるじゃァありませんか。「異色作家〜」と並んで、僕の中では注目の企画でした。昼の部が表の顔・接客向けのプログラムだとすると、夜の部は裏の顔・素人おいてきぼり玄人向けの企画って感じでしょうか。この企画をはじめるにあたっての説明で、読んでなくても知りません、と言われました。取り扱う本のリストを渡されて見回したところ、僕は九割方読んでいなかったので、カテゴリは完全に素人の部類ですが、夜の部まで来てこんな面白そうな企画を見逃すわけにはいきません。かまわず参加してきました。出演者は昼と同じく牧眞司氏と、新たに永田弘太郎氏。この二人が50作品づつ「最強の文学」をあげて紹介していく企画なんですが、なにしろテーマが漠然としているので、二人のテーマに対するイメージや作品の選考理由の話にずいぶん時間が取られてしまっていました。それはそれで面白かったんですが、そのため各作品の解説の時間がちょっと少なかったのが残念なところでした。この企画だったらあと1時間ぐらい時間があってもよかったのでは。ただ、手に入れた「最強の文学」リストは今後の読書の一つの指針にしようと思います。

と、他にもいろいろな企画も見れたし、他の参加者の方とも個人的に少し話ができたので、よい時間が過ごせました。来年も時間があれば行きたいですね。

さぁ、この次はSF大会ですね。・・・・まだ、申し込みしてないけど。