158ポンドの結婚

158ポンドの結婚 (新潮文庫)

158ポンドの結婚 (新潮文庫)


現在、積本数ダントツ第一位のジョン・アーヴィングの作品です。
この本は一冊で完結していますが、アーヴィングは長い作品をよく書く人のようで、他の作品は大体上下巻になっています。気になってはいたんですが、その長さゆえに後回しにしていたら、気が付けば部屋には11冊ものアーヴィング作品が・・・あー、流石にそろそろ読み始めましょう。
この作品は、夫婦交換、要するに互いのパートナーを代えて性行為をするという妙な事を始めてしまった男女4人の話です。アーヴィングの作品と言うと、少し奇妙な出来事が入り混じった話かと思っていたのですが、この作品ではそういう不思議は登場せず、人物の心理の動きにかなり重点を置いていました。
話の中では激しい暴力や殺人など派手な事件は起こりません。物語は静かに進んでいきます。ただ読んでいると、人物ひとりひとりの行動とそこから見えてくる内面の動きによって、じわじわと物語の暗い部分がこちらに浸透してきます。徐々に表れてくる4人それぞれの暗部と関係は、何かしら腐っていく物を見ているような気持ちの悪さがあります。
主要人物の4人の心理は複雑で、僕は語り手の心すらも充分に理解はできませんでしたが、それでもその人物達の確固たる存在感を感じることができました。この洗練された人物描写がアーヴィングの特徴なんでしょうかね。
ところで、アーヴィングは「Irving」というスペルだそうです。ちょっと変わってますね。