タタール人の砂漠

タタール人の砂漠 (イタリア叢書)

タタール人の砂漠 (イタリア叢書)


イタリア人作家ディーノ・ブッツァーティの長編です。
なにやら人の一生について考えさせられる話でした。
砂漠に隣接する、もはや価値の無い古い砦。
兵士達は、そこで単調な生活を続けながらも、いつか敵が攻めてくるのではないかという期待と不安を糧にして生きています。
でも、そんな期待はいつまでも適わず、なまじ期待があるだけに砦の外に出れない彼らは、そこで何年も何十年も任務を続けて、老いて死んでいきます。
舞台は外国の砦で、時代も今とは全然違いますが、この何かぼんやりとした期待を持っているうちに、外の時間はどんどん過ぎていく感じとか、実は期待が適わないって事が分かっているのに、単調な生活に耐えるために信じようとする感じとか、よく分かります。
作品の描き方からも、作中の感情や状況を普遍的なものとして扱っているようなので、
こういう感覚って、いつになっても在るものなんですね。うんざりすることに。
でも、主人公の最後はかっこよかったです。はたから見たら、救いはないけれど。