デス博士の島その他の物語

デス博士の島その他の物語 (未来の文学)

デス博士の島その他の物語 (未来の文学)


未来の文学」シリーズ、ジーン・ウルフの短編集です。
表題作「デス博士の島その他の物語」は、続く「アイランド博士の死」「死の島の博士」と合わせて「島」シリーズと言うくくりだそうです。
タイトルに付いている「死」「島」「博士」という言葉が入れ替わっていますが、内容自体も最初の「デス博士〜」の中身を所々「ひっくり返して」以後の2作が作られているようです。
ただ、僕にはそれがどんな意味を持つかはよく分からなかったので、それぞれ独立したものとして読んでいました。
ちなみに、「デス博士〜」の前に収録されている「まえがき」という章には、「島」シリーズが書かれた経緯などと一緒に「島の博士の死」という物語が入っています。短い作品ですが、複雑さ抜きのいい作品で、ジーン・ウルフの違う一面が見れます。
続く「アメリカの七夜」は、大異変が起こった未来のアメリカに訪れたイランの御曹司が体験する幻惑の七夜・・・のはずなのに、本文中に載っているのは六夜だけ、というなんとも探索心をくすぐられる仕掛けが施された作品です。
そして、最後の「眼閃の奇蹟」は盲目の少年が主人公の作品。盲目の少年に視点を合わせているので、読み手まで本当は何が起こっているのか分からなくなったりします。
オズの魔法使い』を下敷きにしているようで、案山子、ライオン、鉄男なんかが登場します。ただ、彼らが、最初は主人公の夢に出てきていたのが、どんどん起きているんだか寝ているんだか分からない状態でも姿を現し始め、ラストで主人公の意識がはっきりしているのにドロシーが一緒にいるところは、夢現の境がなくなってしまったようで怖いです。


と、まぁ、『ケルベロス第5の首』同様、読んでも深いところまではさっぱり分かりませんが、筋だけ追っていてもなかなか楽しめました。


そういえば、昨日三省堂神田店に行ったところ、貼ってある「今週のランキング(2/10〜16)」の文芸部門でこの本が一位になっていました。リリー・フランキーやら東野圭吾をおさえて。購入特典のトークショー整理券や、神田という立地条件のせいもあるんでしょうが、いや、よく売れているみたいですね。