あくび猫

あくび猫

あくび猫


英国怪談の翻訳者・南條竹則の小説というか、ほとんどエッセイです。
国立大学英文学教授にして無類の飲食好きの中年・あくび先生の生活を、その飼い猫・チビの視点から語っていく、『我輩は猫である』みたいな形式の作品。
しかし、その内容はと言えば、おっさんらが集まって主に関東近辺のうまい物屋で飯を食う、というだけのもの。時折、古今東西の詩や小説のネタ、怖い話や音楽の話題なんかを織り交ぜているので、文化人っぽい雰囲気はありますが、中心はやはり「食う」の一点に絞られています。
小説第一作の『酒仙』のような物語としての面白さはあまりありませんが、登場する料理の美味そうなことと言ったらありません。特に中華料理については、聞いたことのないようなものが飛び出してきて、夕飯の30分後でも腹が減ってきます。
登場する地名は、神田や目白と言った実在の場所な上、端々で登場人物がしている出版系の話の内容なんかを読んでいると、どうにも人物の名前や詳しいところは違えど、大体は南條竹則自身の生活をそのまま書いているんじゃなかろうかと思えます。
ということは、作中に出てくる料理や店は実在するわけで、地名や店名がかなり詳しく出ているため、神田らへんによく行く僕は捜そうと思えば作中に登場する美味い物を食べに行くことも出来るのです。
うーん、明日にでも神田の「出雲蕎麦」とやらに行ってみようかなぁ・・・。