バビロンを夢見て


立喰師列伝』の1エピソード、「フランクフルトの辰」のもとネタです。
「おれがどうしても一流の私立探偵になれない理由の一つは、
年がら年じゅうバビロンの夢ばかりみているからではないかな」
という冒頭がとても印象的。この他でも『立喰師〜』で聞いたフレーズがぽこぽこ出てきます。
しかし、この話の主人公C・カードは、本当にダメな男です。
まともな仕事も無く、やることといったら理想の世界バビロンを妄想することだけ。
まっとうに働こうとしても、不意にバビロンの妄想が襲ってくると、すべてを忘れて没頭してしまい、結局何事もうまくいきません。バビロンを夢見ながらバスに乗ればバス停二つ乗り過ごしてしまい、それを引き返す道中歩きながらバビロンを夢見、またも二駅行き過ぎてしまう、という具合で、30代まで生きてきたこの男。そもそも、現在やっている「私立探偵」という職業自体、「逃避」の産物なのだから、真に救えない話ですが、なんともはや、共感出来てしまう僕というものがある上、作中では、こんな男でもなんとか楽しそうにしぶとく生きているのです。
この作品は、どうしようもなさ過ぎて実に暗い話でもありますが、そんなどうしようもないのでも生きてきてちゃうというふてぶてしい話でもあります。果たしてどちらで読めばいいのかわかりませんが、まぁ、世の中ポジティブに考えて生きたいものです。
でも、問題は、こんな話を書いたブローティガンが、結局はピストル自殺しちゃったってことだよね。