ミサイルマン 平山夢明短編集

ミサイルマン―平山夢明短編集

ミサイルマン―平山夢明短編集


 なんだか最近、僕の中で「安定的に面白い作家」になりつつある平山夢明だけれども、なにしろ内容が内容だけに電車の中や職場のお昼休みに読むのが難しい。
 読書中に職場の人に「何読んでるの?」と声をかけられて、うっかり正直に「妻も娘もいる男が、人が死ぬ時に発現する奇跡を見たいがために女の人を殺害しまくって、最後には自分の娘にも手をかけちゃう話なんですよ。フヒヒ。」だなんて言おうものなら、明日から若いケータイのヘルパーさんが口をきいてくれなくなること請け合いである。

 なにしろ、殺人だの死体だの汚物だの臓物だの狂人だの、普通の作家が書かなかったり言葉を濁したりする部分を、あっけらかんと見せつけてくるような作風なものだから、内容的にはSFあり伝奇ありミステリーありホラーありとかなり多種多様なのに、読んでいて全部同じ臭いがする。この臭いは、多分ブルーチーズみたいなもので、好きな人以外は顔をしかめるしかない種類のものだと思う。でも、先日読んだ『粘膜人間』の時も同じようなことを書いたけど、こういうのがどうしても読みたくなる時があるんだよね。マクドナルドのポテトみたいな感じで。定期的に。 

 やっぱり職場で読むのは畠中恵の妖怪時代小説とか恒川光太郎なんかが話もしやすいしいいんだろうけど、ところがどっこい今はそういうの読む気分じゃないんだな、これが。