おっさんのこと

 帰宅途中の地下鉄にて抜き身の包丁を抱えたおっさんを見る。
 大きな黒いリュックを背負い日に焼けた顔の、一見ホームレス風の出で立ち。
 駅の階段にしゃがみ込み、包丁をごく普通に手に持って、階段を上がっていく僕ら雑踏をつらつらと眺めていた。
 横を通る人は誰も顔を合わせないし、誰も喋りかけないで、そのまま通り過ぎる。
  
 世はまさにリアル東京伝説。