悪の教典

悪の教典 上

悪の教典 上

悪の教典 下

悪の教典 下

 生まれつき他者に共感する能力が欠損しているため、他人を「殺す」ことにためらいを持たない男が「面倒見がよく頼りがいのある先生」の仮面をかぶり学校を裏から支配する、という話。
 この主人公、短気を通り越して脊髄反射的と言っていいほど行動に迷いがない、何もかもが唐突な人物である。クールな天才という設定にもかかわらず、気に入らなければ即排除、その気になったら即性交、というマジもんの狂犬。
 話の展開上、なんか後々敵対しそうだなってフラグが立ったキャラがいたとしよう。普通の作品なら対決のシーンを盛り上げるために相手の見せ場を作るところだが、この『悪の教典』は違う。フラグを立てた数ページ後には主人公の真珠湾並みの電撃的な闇討ちを受け、そのキャラはなすすべもなく排除されてしまうのだ。それが、どんな強キャラ良キャラであろうとも。
 実際、ラスボス然としていた人物がやっと動き出したと思ったら、その日のうちに主人公からブラックジャックの一撃を受けて地面に転がる展開には、茫然とさせられた。

 そんなんだから、下巻に入るころには大した敵の存在は無く主人公にとっては完全に人生イージーモードという、驚きの状況に。主人公のキャラを活かしたがゆえに物語が死ぬという、なんか色々ともったいない一作。