青ざめた逍遥

 クリストファー・プリースト著/安田均訳 SFマガジン1981年1月号収録
今日は短篇一つだけです。プリースとの作品は大体SFやら幻想やら文学やら色々なジャンルの境界をうろうろしていて、なかなかこのジャンル、と当てはめることは出来ないのですが、本作はSFの香りが強かったです。と言ってもやっぱりプリースト。物語の中心には男女の恋愛を持ってきているし、彼らしい入り組んだ複雑な構造で読んでる人間の方向感覚をぐらぐらさせるような作品です。
ネタとしてはタイムスリップ物で、『昨日』や『明日』に行くことのできる『時間橋』が人々の娯楽となった世界で一人の少年が未来の世界であった女性に恋をし、そして成長していく話です。こうやって書くといかにも凡庸な感じがしてしまうんですが、よく練られた構成や男性のリアルな感情描写によって非凡な作品になっています。見つけたら是非読んでみてください。