ジョナサンと宇宙クジラ

 ロバート・F・ヤング著 ハヤカワSF
以前この本に関する書評を読んだことがあって、内容はほとんど忘れてしまったんですが、ただ一言「ヤングは大きい女性フェチなのでは?」というところがあったことだけ非常に強い印象があって覚えています。そんなわけで、妙な偏見を持って読み始めたわけですが、予想とは裏腹に大きな女性が出て来る話は10話中2話だけでした。はたしてこの数が多いのか少ないのかは判断のつけかねるところではありますが、僕の抱いた印象では「大きいものフェチ」ってほどじゃあなかったです。だって、この本に入っている10本の短篇のはとんどが恋愛で、各話によって非常に個性的な女性が出てくるんですから。出て来る女性ははじめの学校の先生兼メイドの女性型ロボットに始まり、季節の妖精、スター志望の田舎娘、はるかに進んだテクノロジーを持った惑星の女カウンセラー(見た目は少女)などなど。なんだか、今で言う「萌えキャラ」にくくられるような女の人がやたらと多いんです。ちなみに、大きな女性というのは、惑星をも一飲みするほどの大きさの宇宙クジラ(17歳の女の子!!)と海の中に住む巨人族の女の人です。しかも、一人一人性格も違って違って実に個性的・・・って、なんだか恋愛ゲームの紹介みたいになってますけど、別に歪んだ形で伝えてるわけじゃないですよ。そして、ヤングのすごいところは「恋愛」という他のSF作家より狭い範囲の中で書きながらも、一つ一つの話をSF・ファンタジーなどのジャンルに囚われない自由な発想によって、まったく違う個性的なものにしている点です。しかも、それらはすべてに温かさと悲哀が織り交ぜてあり読後感が非常にいい。表題作の「ジョナサンと宇宙クジラ」なんてもう・・・。
いつになるかは分かりませんが、奇想コレクションで出る予定の『たんぽぽ娘』が楽しみです。