誘惑者

アルベルト・モラヴィア著/大久保昭男訳 學藝書林
いつものようにはまぞうで画像と情報をアップしようと思ったら出ませんでした。刷られたのが昭和の46年なのでいくらなんでも古すぎたのかもしれませんね。
で、この本は非常に期待して読んだのですが、残念ながら国書のアンソロジーに入っていたような幻想小説ではなく、リアリズム小説のような感じでした。ただ、モラヴィアの黒さは健在。5つ入っている短編のどれ一つとしてハッピーな終わり方をするものはなく、かといってドラマチックな悲劇を装うこともなく、取りあえず誰も幸せになれない話ばかりです。まぁ、誰も幸せになれなくても、出てくるやつらが誰も彼も嫌なやつか阿呆なやつだけなので、読み終わって嫌な気になることもありません。こんなやつらならこんな終わり方だろう。なんとも倦怠ただよう作品集。