西瓜糖の日々

西瓜糖の日々 (河出文庫)

西瓜糖の日々 (河出文庫)


読むと心が静かになる、妙に落ち着く、そんな「静寂分」とでも言うようなものを持つ作品でした。この「静寂分」を持つ作品というのは、僕は今まで村上春樹の作品以外では御目にかかったことがなかったので、出会えて非常に嬉しいです。
舞台となっている、西瓜糖に囲まれた小さなコミュニティ<iDeath>は静かな場所です。人々は、飯を食べ、仕事をして、寝ます。そこには、起伏のない、だけれど幸福な日々が続いています。時に暴力や死によってそれはかき乱されますが、ことが過ぎればまたふたたび静けさが全てを満たしていきます。全てを飲み込み幸福に見せてしまうこの「静けさ」は、現実からの逃避や死の匂いすら感じますが、それでも抗いがたいほど魅力的です。
行きたいなぁ、<iDeath>へ。