そうはいっても飛ぶのはやさしい

そうはいっても飛ぶのはやさしい (文学の冒険)

そうはいっても飛ぶのはやさしい (文学の冒険)

チェコスロバキアの作家・ヴィスコチルとハンガリーの作家・カリンティの二人の作品が入った短編集。
読む前から、これは面白い作品だ、と確信してしまいたくなるようなこの奇妙なタイトル。ヴィスコチルの作品の中の1篇です。この人のつけるタイトルはどれも面白いものばかりです。大体は話の内容をそのまま書いたようなものなんですが、「アルベルト・ウルクの信じがたい昇進」とか「師であり友である人は世に知られないまま残った」とか、それだけで妙に惹かれるものがあります。作者は第2次大戦下の圧制の時代を生きた人らしく、作品全体に社会主義や権威に対する反抗心が隠れていて、そこがまたいい毒になっています。
そして、もう一人・カリンティの作品はヴィスコチルに比べるとタイトルも内容もシンプルです。素直に感動や笑いに直結した作品達。ただ、その作風は1篇1篇変化していて、SFらしいものから、寓話的なもの、半私小説に演劇形式のものと変幻自在。器用なやつです。