ナイチンゲールは夜に歌う

ナイチンゲールは夜に歌う

ナイチンゲールは夜に歌う


ジョン・クロウリーの短編集。全部で4編入っていますが、ファンタジー風の作品もあればSFものもあるし、作者の作家としての心中を形にしたような作品もあります。
でも、突出して面白いと感じたのはSF作品の「時の偉業」です。タイムスリップをテーマにした作品で、6つのエピソードからなるその構成自体もテーマにかかわってくるという技巧的な作品です。
でも、そんな発想と同時に作者は物語を進行させる登場人物の行動・心境をすごく丁寧に描いているところがこの作品の大きな魅力です。後半に行くに従い従来の姿からは変貌した異様な世界も登場しますが、その見たことも無い受け入れにくいはずの世界の情景や空気が、丁寧に書かれた人物の目からすんなりと読み込むことができます。すんなりと入ってくれば、古典といわれるようなテーマでも新たに面白く感じられます。なんだ、タイムスリップって面白いじゃないか、と感じさせてくれるその効果がとても新鮮でした。