奇想遍歴

奇想遍歴

奇想遍歴


ベアリュは2冊目です。内容は本国でベアリュが発表した3つのショートショート作品集、「半睡の物語」「奇想遍歴」「鏡」を一冊にまとめたものになっています。
「半睡の物語」は『水蜘蛛』の雰囲気そのままのベアリュ、というか『水蜘蛛』はこの作品集のいいとこ取りをしているみたいです。そのせいで今回は新鮮味が薄れて少し味気ない感じがしました。
「奇想遍歴」は架空の都市・産業を描いた連作。「鏡」はそのまま鏡をテーマににした作品集です。「半睡の物語」より風刺とユーモアが強くなっています。ちょっと表現されているものがあからさまで、野暮ったくなっている気もしますが。
ただ、この本で引っかかるのはなんといってもこの表紙です。
表示される画像は小さいので分かりにくいと思うんですが、現物を見るととても気持ち悪いんです。ちなみに、本の後ろには羽が生えた空飛ぶ目玉がたくさん描かれています。
確かに、ベアリュの作品は読み方によってはすごく気持ち悪い後味を残すものになるので、このイメージが間違っていると言うわけではないのですが・・・ちょっとねぇ。これを見た後だと、気味の悪いイメージが固定化されてしまって、綺麗という感情が湧いてきません。特に、訳者もベアリュの持ち味をその描く世界の美しさだと考えているようなので、この表紙はないんじゃないでしょうか。