日本怪奇小説傑作選2

日本怪奇小説傑作集 2 (創元推理文庫)

日本怪奇小説傑作集 2 (創元推理文庫)


早速読んでみました。
今回は一巻よりは時代を下って、戦中、戦後初期に発表された作品を収録しています。
全体的な雰囲気を見ると、一巻にあったエロ・グロの風潮は息を潜め(風太郎は例外)、人間心理の怖さを描いたサスペンス調のものや怪奇というより幻想の方に近よった作品が多かったです。これが西洋の影響というやつなのでしょうか。
中でも良かったのは橘外男の「逗子物語」と山本周五郎の「その木戸を通って」の2作。
「逗子物語」はこの作品集の中では古めかしい幽霊もの。療養先で幽霊に疲れてしまい、里に逃げ帰ってほっとするかとおもい気や…と筋もやっぱり古びていますが、何しろ幽霊の出方が一番怖い作品でした。ただ、最後の最後になると、本当に幽霊がいるのか、それとも幻覚なのか、というヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』のごとき新しい怖さもきちんと取り入れた話でもあります。
そして、「その木戸を〜」は神隠しもの。ある侍の家に現れた記憶喪失の女性をめぐる話です。時代劇で、しかも悲恋ものというこれもまた非常に古典的な筋ですが、古かろがなんだろうがやっぱり哀愁は好きです。
ただ、怪奇かと言われると違うような…やっぱり怪奇はエロ・グロだよね。