日本怪奇小説傑作集3

日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫)

日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫)


 日本の怪奇作品の流れを追ったこのシリーズもついに最終巻。
 今回は、戦後復興を成し遂げ経済成長著しい昭和35年から、つい最近の平成5年までの作品を収録。作家で見ると、これまでのように怪談、探偵、純文学の畑の人ばかりでなく、SFや最近言葉の生まれたホラージャパネスクに数えられるような人も入ってきます。
 楽しみにしていた小松左京の「くだんのはは」はやはりとてもよかったです。
話自体の怖さもありますが、なんといっても作中に書かれるその雰囲気。戦時下の、重々しい、どこか歪んだような抑圧状態と、敗戦によるそこからの開放。変化する主人公の心理状態と行動もあいまって、かなりリアルにその空気を感じることが出来ました。
 筒井康隆の「遠い座敷」も、「怖さ」を巧く抜き出していて好きな作品。
子供の時に感じた、夜中に一人で歩くときの「怖い」って感じを思い出します。
 そして、面白いことに、この作品中一番古風な怪談っぽい話は半村良の「箪笥」でした。
気味の悪いものが徐々に徐々に迫ってくる展開と、その怪異の意味の分からなさが、実に怖い作品です。
と、好きな作品を並べてみるとSF作家として知ってる人が多いのは自分でも意外。
 読んでいて気づいたこととしては、僕の怪奇の嗜好として、現代的な要素が目立つものが好きではない、というのがあるみたいです。なので、山本方夫の「お守り」のようにテーマ自体が戦後独特の作品は、どうも好きになれませんでした。
 ついでに、シリーズ全体を通して考えてみると、やっぱり一巻が最上です。時代とすると、明治・大正・昭和一桁くらい。ここらへんは、ほんと黄金期ですね。