愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ

愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ

愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ


今年の日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞作。
そして、同賞始まって初の受賞辞退という話題作。
自殺した元恋人(女)の残した手がかりから、スラム街に足を踏み入れた主人公(女)は、そこで「告白を聴く」ことを仕事とする一団の中で生活を始める。そして、その中の一人(女)と恋に落ち・・・
と、あらすじだけなら幻想同性愛小説と言った感じです。
ただ、実際には、店に来る客の「告白」、店で働く従業員の「告白」、店のあるビル界隈の住人の「告白」など、話の半分くらいは「告白」によって進行していきます。
「告白」をする人たちは、同性愛者だったり、ヤク中だったり、妙な妄想を持っていたり、と妙な人ばかり。そして、「告白」の多く何故自分がそうなったのかを説明するような内容のものです。
話は全体として、落ち着いた雰囲気を持っていますが、それに対して内容は少し荒削りな感がありました。「告白」の中で語られるエピソードと現在のその人が、理屈では確かに繋がっている気もするんですが、どうも、どこかであったような既存の展開に任せているような気がして、心情的なところで納得が出来ません。この心情変化の描写の粗さは、読んでいて近頃の上遠野浩平作品を思い出しました。
あ、でも、耳から金属のスプーンを出す一族の話は好きです。