蟹工船 一九二八・三・一五

蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)

蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)


プロレタリア文学者・小林多喜二の代表作。
荒俣宏がこれをエログロで読み解いていたことしか印象に無かったのですが、この作品、元々共産主義の話なんですね。
虐げられ、塵屑のように使い捨てられる労働者達が、その状況に徐々に不満を募らせ、ストや反乱によって抜け出そうとし、ついには社会自体が自分達の敵であると悟る、という言わば共産主義への「目覚め」に当たるのが「蟹工船」。
もう一つの「一九二八・三・一五」は、共産主義運動を繰り返す人々の姿を、理念を持った中心人物や、ただ現状の辛さから活動に参加している者、更にはその妻や母達、などといった様々な視点から捉えた作品で、「目覚め」た後に当たる物語になっているように思えます。
有名なのは「蟹工船」ですが、共産主義というものをしっかりと捉えて面白いのは「一九二八・三・一五」。
荒俣っぽく怖さを求めて読んだ場合でも、「一九二八・三・一五」の方が一歩秀でているような気がします。母親・妻などから見た男達の変貌、親しいはずの人が、徐々に理解できないものを求めて変わっていくその様は、サイコ・ホラーに似た匂いがあってなかなか不気味。


そういえば、中学の頃、プロレタリア文学作品で「夫がコンクリートねり機の中に入っちゃってミンチになっちゃった、て手紙を見ず知らずの人が受け取る」という話を教科書で読んだのですが、あれはなんという作品だったか・・・。とても面白くて、そのまま感想で「爆笑した」みたいなことを書いたら、先生にすごい怒られた記憶があります。