ページをめくれば

ページをめくれば (奇想コレクション)

ページをめくれば (奇想コレクション)


河出の『奇想コレクション』シリーズの最新刊。
女流SF作家ゼナ・ヘンダースンの短編集です。
この人、「子供の頃には持っていて、大人になったら亡くしてしまうもの」って感じのテーマを、ぐるぐるぐるぐる回して何作も何作も作っているようで、なんか似たような作品が並んでいます。
それでも手を変え品を変え、怖いものから笑えるもの、泣けるものまで色々揃ってますし、柔らかい作風のおかげでどれも読み易く、まとめて読んでいても疲れません。
ただ、反面、強烈な「ひき」や鋭さがないので、何作も読んでいると物足りなくなってもきます。
寧ろアンソロジーなんかで、他の作品にはさまれていた方が、その優しい雰囲気が引き立って面白く読めるのではないかと。


おすすめは、表題作「ページをめくれば」。
物語の形を取っていますが、作者の「物語」に対する強い思いを語った半エッセイのような作品で、短いながらも生の感情が伝わってくる一篇です。
これと、本書は入っていませんが『幻想と怪奇2』や『20世紀SF2 1950年代』など様々なアンソロジーに収録されている「なんでも箱」の2作はゼナ・ヘンダースンの短編の中でも頭一つ出た作品。
というか、この二作を読めばもういいんじゃないか、と思わないこともない。