死霊の恋・ポンペイ夜話


今年も大学で仏・日の比較文学文化というゼミをとったので、フランス文学の発表することに。
去年の『オーレリア』での苦難を鑑みて、今回はネルヴァル、ブルトンなどの理解事態が難しい作家は作家は避け、T・ゴーチェの「オニュフリユス」と無難なところに固めました。


そんなわけで、「オニュフリユス」を含むこの短編集を再読。
吸血鬼女が坊主をたぶらかす「死霊の恋」や、遺跡から発掘された女性の胸の化石に惚れた男がその女性が生きていた時代に迷い込む「ポンペイ夜話」など、怪奇・幻想を書いていても恋愛が中心に来てしまうのはフランス人の性(さが)なんでしょうか。
ただ、肝心の「オニュフリユス」についてはロマン派としてバリバリ活動していた時期の作品ではなく、後年の思想を転換させた頃の作品だそうで、ロマン派の若者を揶揄するような内容になっています。さて、どうやってすすめたものか・・・。
ちなみに本書の中で一番面白かったのは「コーヒー沸かし」。
幻想への導入と脱出のイメージといい、怪異自体の不可解な気味の悪さといい、短いながらも突出した一篇です。