ホフマン短篇集

ホフマン短篇集 (岩波文庫)

ホフマン短篇集 (岩波文庫)

ドイツの幻想作家ホフマンの作品集。
収録作は「クレスペル顧問官」「G町のジェズイット教会」「ファールンの鉱山」「砂男」「廃屋」「隅の窓」の六作です。
フランスのロマン派に多大な影響を与えた、と言われるだけあって、多くの作品に見られる、日常の些細なことや夢から幻想の世界に迷いこみ、次第に狂気に陥っていく・・・という話の流れはゴーチエの「オニュフリユス」や「ポンペイ夜話」などを思わせます。
ただし、ゴーチェの場合、狂気に陥っていくその人が作中の視点となっていて、主にその内面の葛藤を中心に描いているのですが、
ホフマンは、そこに他者の目などの客観的に見る目を置くことによって、他者から見た狂人の「怖さ」「気持ち悪さ」をも描き出しています。
特に代表作「砂男」は、子供時代の恐ろしい記憶を元に狂気の土台や引き金をしっかりと作り上げていく手法といい、強烈でグロテスクなラストといい、とても約200年前の作品とは思えない鮮烈かつサイコなホラーです。
子供時代に植え付けられた恐ろしい記憶から始まり、血生臭い言い伝え、自動人形への愛、視点の変化から生じる認識の変化、などなど後年の怪奇小説に登場する様々なガジェット・手法が盛り込まれているのも興味深い。