ジョナサンと宇宙クジラ

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)


再読しました。
前回読んだのは一年以上前で、旧装丁のほうですが、何故か家からなくなってしまったので新装版で買いなおしました。新装版の表紙もいいんですけど、個人的にはやはり旧版の方の壮大なイメージが気に入っています。

しかし、久しぶりに読んだヤングはやっぱり「愛」と「優しさ」に溢れていました。
なんか人間、読書を続けていくとどんどん性格が捻じ曲がっていって、SF好きならSF、怪奇好きなら怪奇、って感じにどんどんハードでコアなものばかり尊ぶようになってしまい、そのうち「愛」だの「優しさ」だのとお題目を掲げたものを見ると馬鹿にしちゃうような歪んだ性格になっちゃうものなんですが…なっちゃうんですよ僕は。でも、実はそういう甘くてべたべたな話を求める心は残っていて、時々アンソロジーにちょこっと紛れこんだ「泣き」の話にコッロといかされて、今まで散々礼賛してきたハードでコアな流れの作品よりも印象に残ったりするんですよね。『怪談の悦び』(東京創元社)におけるキプリングの「『彼等』」みたいに。
ヤングってそんな感じにうまくコロリといかされちゃう作品ばかりを書く人です。可愛い女の人が出てきて、傷ついた男が出てきて、くっついて癒されて、っていつもなら唾を吐いちゃうような筋なのに、ヤングが書くとなんだかすんなり素直な自分に戻って受け入れちゃいます。あわよくば涙流しちゃったりしてね。

今度仕事に疲れたら『ピーナッツバター作戦』だな。