天王船

天王船 (中公文庫)

天王船 (中公文庫)


宇月原晴明初の短編集。
一応、『黎明に叛くもの』のノベルス版全4巻に一話ずつ収録されたものではありますが、それぞれ『黎明に〜』以外の信長や秀吉や安徳天皇の話に繋がる話にもなっています。読むと宇月原の描く暗黒・歴史ワールドがぐんぐん繋がって広がっていってワクワクがとまりません。
歴史的資料や史実の隙間を空想によって埋めることで、トンでもない「歴史」を作り出す手法を見せてくれる「天王船」や、豊臣秀吉小早川隆景といった歴史上の人物を個性的なキャラクターに色付けして動かしてくれる「神器導く」も、作者の特徴を短篇の長さに凝縮した凄いいい作品ですけど、やっぱり一番面白かったのは「破山の街―『東方見聞録』異聞」。フビラエ・ハーンの軍勢VS殺人人形を操るペルシャ暗殺者VSジャパニーズ・サムライの異種殺人術三つ巴戦だなんて、こんな無茶苦茶なことを最後の最後で出して来るから宇月原は止められないです。