海に住む少女

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)


誰が言ったか知らないけれど、作者シュペルヴェイルは「フランス版宮沢賢治」らしいです。童話みたいだけど大人が読んでもはっとさせるような、深さや感情が含まれている作品を書いているからなのかも知れません。
でも、童話のような…って言われる作品って、普通に読んだだけでは、「いい話」とか「綺麗な話」ってくらいの感想しか浮かばなくて物足りないことがよくあります。もっと作者独特のもの、灰汁や毒が見たくなっちゃうんですね。だから、宮沢賢治なんかを読む時は、「こいつはシスコンだったんだ」とか「こいつは童貞だったんだ」とか、作者の背景状況を含めて、うがって読んだ方が楽しく読めてしまいます。すごいひどい読み方だとは思うんですけど…。
『海に住む少女』にもそんな物足りなさを感じてしまいます。いいか悪いか作者についての知識もなかったので、変な読み方もできなかったしね。
ただ、表題作の「海に住む少女」と「空のふたり」のイメージは凄くいいですね。誰もいない海の真ん中にある誰もいない町で、他に人が住んでいたら起こるであろう事(町中にシャッターの開け閉めとか、お祭りの鐘を鳴らしたりとか)をたった一人でこなして生きている少女、現実の世界と同じ姿形をしているだけど全く変化しない影が住む町が空の上にある、とか。