サマーバケーションEP

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 「ザ・トーキョー」って感じの小説でした。
 井の頭から湧き出た水の流れを追って、東京を横断し、海にまで出る。その散策の過程を語った、ただそれだけの話ではあるんだけど、そこには出会いも分かれもドラマもロマンもあって、いつもの慣れ親しんだ御茶ノ水やら飯田橋の景色が、少し色鮮やかに感じられる。いつもの東京が、主人公の踏み出した一歩から、少し様変わりた姿を見せる。多分、これを読んだ後だと、同じ場所に実際に行っても見え方が変わるだろう。この現実の景色の見え方を少し変えてしまうってのは、銀林みのるの『鉄塔武蔵野』に似ている気がします。もっとも『鉄塔武蔵野』読んで変わるのは、景色じゃなくて鉄塔だけどさ。
 ドラマもロマンも見方の変化も最初の一歩を踏み出してからだな。うん。最初の一歩が出るか出ないかが重要だ。