空の境界

空の境界(下) (講談社文庫)

空の境界(下) (講談社文庫)


たしか昨年末あたり、大学の人間と集まって飲んでいた折に

「あなたは厨二の聖書も読んだことがないんですか」

とか、後輩に攻められたので読み始めたんだよね。
この前話したらそいつはすっかりそのこと忘れてたけどさ。

それにしても、帯やら解説やらを読む限りでは、まだ講談社は「新伝奇」という言葉を現役のものとして使っているんだね。初めてこの言葉を聞いた時、「なんじゃそりゃ?」と友人らと頭をひねらせたものだけど、話をするテキストとして上遠野浩平の『ソウルドロップうんたらかんたら〜』を採用したもんだから、余計わけが分からなくった思い出がある。あぁ、あの時は長いからって横着せずに、この『空の境界』こそテキストにすべきだったんだ。

魔術やら結界やら妖精やらといった要素を織り交ぜつつアクションやロマンスを行っていくのが「伝奇」の部分。
舞台を「今」の「日本」、キャラクターを「僕たちに近い若者」にしているのが「新」の部分。
ただ、「今」と「伝奇」の世界を繋げるためには、こんな怨みつらみがあったから〜という昔ながらの恩讐劇や何代前からの祟りだよ〜なんて伝承があるだけじゃ、まだ足りない。そこに、魔術云々、妖精云々、僕らの生きる世界云々と言った長大な説明が必要になってくる。キャラクターの独白や先生格の燈子の異様に長いしゃべくりが、力任せではあれ「伝奇」の世界を今の僕らに近づけてくれる。

アクションとロマンスがあって、おまけに乗り越えたしゃべくりの分だけ特別なことを知ったような気にさせてくれる本なのだろうと思うけど、流石に社会にまで出たおじさんはそんなのには騙されないぜ。なにせ、『ブギーポップは〜』に騙されつくした後なんだからな。