地獄

地獄 英国怪談中篇傑作集 (幽クラシックス)

地獄 英国怪談中篇傑作集 (幽クラシックス)


久しぶりにブラックウッドを読んだ。
とても面白かった。
ブラックウッドってこんな面白かったけか。昔は御三家の中では一番ピンと来ない人だったんだけど。
収録されていた中篇「地獄」は、とても「ブラックウッドらしい」作品だった。
彼の超常現象に対する構え方とか、生い立ちとかがもろに出ている。
作中で、主人公が感じている「いっそ何かが起こってくれればいいのに、気配だけ感じさせてクライマックスがない」という焦れる様な感覚には、超常現象を起承転結のある「物語」としてではなく、あくまで人の思惑からは離れた理解の難しい「現象」として描くことによって、リアルさ・怖さを目指した彼の創作スタイルが見て取れるし、怪異の元となっている「偏屈で熱心な宗教家」というイメージなんて彼の父親そのまま。解決の仕方、というか最後に現れる救世主的な存在も、キリスト教を離れて東方思想や流行のオカルトに染まった彼ならではの発想だ。
なんだか、昔詰め込んだブラックウッドに対する知識をおさらいしているような読書体験だった。
背景を知ってから面白くなる作家ってのもいるんだね。


それにしても、最近、南条竹則の翻訳業が活発化している気がする。来月にはチェスタトンの『木曜日の男』の新訳も出すらしい。南条というと、一年に一冊翻訳するかしないかの人だと勝手に思っていたんだけど……嬉しいなぁ。