深泥丘奇談

深泥丘奇談 (幽BOOKS)

深泥丘奇談 (幽BOOKS)



祖父江慎の装丁がすごい! のに惹かれて買ったら、内容もすごくよかった。

僕はミステリーと怪談は同じ根っこから出た反対のものだと思っている。
事件・怪異といった非日常的で暗い出来事が起こるまでは同じで、これを解決するのがミステリの美学、解決しないのが怪談の美学、と非常に乱暴な分け方ではあるのだけれど、僕はそこでこの二つを分けている。そして、解決しない方が好きなのだ(だから、怪異を倒して解決してしまうモダンなホラーとかオカルト探偵とかはあんまり好きじゃない)。
綾辻行人が同じように考えているかどうかは分からないけれど、本格ミステリー書きの作者が書いたこの「怪談」は、見事にミステリーに備わってる「解決」の部分をそぎ落とし、解決できない・分からないという「怪談」の美学が体現されている。
主人公の感覚すらおぼろげで、登場人物はどこか信用ならず、起こる出来事は「幽霊」とか「犯罪者」といった安易なレッテルすらも貼れない未体験の奇妙な現象。掴みどころがなくて、危ないのかどうかも分からないのだけれど、どうにもこうにも不安で気味が悪い。ちょっとロバート・エイクマンを思い出すような読書感。

えらそうな言い方ではあるけれど、「わかっていらっしゃる!!」と膝を叩きたくなる作品だった。