てのひら怪談

([か]2-1)てのひら怪談 (ポプラ文庫)

([か]2-1)てのひら怪談 (ポプラ文庫)


巻末の解説で京極夏彦も言っているけれど、一口に「怖い」といってもそこには物凄く様々な形がある。
突然ワッと背後から脅かされるようなショッカーとしての怖さあれば、海を泳いでいてふと自分の遥か下に圧倒的に大きな生物を見た時の畏怖もある。宗教や社会倫理を超えた時に感ずる禁忌の感覚や、はたまた、自分の感覚がある時から信じられなくなる「不安」だって恐怖である。
本書におさめられたたった2ページの怪談達は、そんな「怖さ」の多様さを教えてくれる。
本当に短い。そのために、興ざめな怪異の原因説明やら因果関係などはほとんど描かれない。
スパッと「怖さ」のみを描いている。
そこが実に爽快であり、これこそが「怪談」という感がある、まさに珠玉の作品集である。
東雅夫の最近の仕事で一番当たりなんじゃなかろうか。