聖家族

聖家族

聖家族


ずいぶん長い間読んでいた気がする。
通勤中の電車の中やら寝る前やら休みの日の空いた時間やら、ばらばらと一カ月以上かかって読み終えた。

しかし、すごい本だった。

複数のエピソードが混じり合っていて、一冊の本なのに何冊も並行して読んでるような気分になる。
ストレートな一本道の物語じゃない。
『ベルカ吠えないのか』みたいな、一点から始まる樹形図みたいな形式でもない。
『ロックンロール七部作』みたいな、リレーみたいに物語をつないでく形式でもない。
いくつもの物語が、入り組んで、交差して、広い広い「面」みたいなものを作っているような感触だった。
一冊の本のどこから読んでも話が始まったり終わったりしている。
そして、どの物語もこっちをぐいぐい話に引き込んでくる。いつ読んでも、どこから読んでも、面白い。

読み終えた後も、また読み返したくなる。この本のことだから、初めからでもいいし、途中からでもいい。
適当に開いて読み始めても、また、そこから話が始まったりしているだろうから、面白いだろうと思う。

古川日出男の本は一冊読むたびに、目から鱗だ。まだまだ、文章には出来ることがたくさんあるのだと実感させられる。