ファントム・ピークス

ファントム・ピークス (角川文庫)

ファントム・ピークス (角川文庫)


こういうパニック小説って日本人作家じゃ珍しい気がする。
何が事件を起こしているのか、みたいなところもこの手の話では面白い所なんだろうけど、amazonが親切にも「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のところで『熊嵐』とか『シャトゥーン』とかを並べてくれていたおかげで、読むまでもなくその正体がわかってしまった。便利すぎるのも考えものだ。
ただ、そこがわかっていても読んでいて怖いし面白い。
敵意を持った圧倒的な何かが襲ってくるっていう「自然」の怖さに加えて、なんでこんなもんがここにいるのさって原因を探る場面で見えてくる「人」の側のグロテスクさもなかなか凄い。
「正体見たり〜」で終わらない、一冊を通じてダレない作品。

少女不十分

少女不十分 (講談社ノベルス)

少女不十分 (講談社ノベルス)

この読後感は・・・多分、「たけしの挑戦状」とか真面目にクリアした人が味わった感覚と近いんじゃないだろうか。
マジになんてなっていないやい。

ノエイン

出たからには買わざるを得ない。

しかしなぁ、いつの間にかカラスやフクロウと同い年になってしまったよ。
今ならカラスの気持ちにより近付けるのではと思って見返してみたら、いつのまにかノエインの気持ちに共感していた。
僕の世界は、あの日から順調に低い方に低い方に分岐していっているようだな。

『本の雑誌血風録』

本の雑誌血風録 (朝日文庫)

本の雑誌血風録 (朝日文庫)


椎名誠の『本の雑誌血風録』を読む。
その名の通り、椎名誠と愉快な仲間たちが『本の雑誌』を発行して、会社を作るまでの顛末を書いた、(大体)ノンフィクションな小説。知り合いを頭の中でシミュレートして勝手に書いた「一人座談会」や、著者の大らかな性格から来る「記憶違い」が多々あるので、なんでもかんでも鵜呑みにも出来ないけど、その適当さも面白い。
酒の席で出た話から同人誌的なノリで一つの雑誌を完成させ、なんとかなるさと倍々倍に刷り部数を増やして、配る人手が足らないからとバイトを雇って、本を置く場所がないからとオフィスを借りて、ここまでやったならと会社を作って、どんどこどんどこ進んでいく著者とその仲間たちの姿はかなり「アツい」。読んでると、なにやら腹の中からふつふつと「何かせねば」というエネルギーみたいなものがわいてくるような気がする。ただ、僕は寝ると気分が変わっちゃうから、結局何もやらないんだけどね。

今日の仕事

ソニーの最新BDレコーダーを、15インチブラウン管テレビデオに赤白ケーブルで繋げて、5.1ch対応BDを視聴。時代を超えた奇跡のコラボレーションに、ソニーのレコーダー技術者が草葉の陰で泣いている。スパロボに例えるなら、機体に限界値があったころのLv.50越えアムロ・レイぐらいムダなスペック。

苦役列車


苦役列車

苦役列車

これが今流行りの「日常系」ってやつか・・・

悪の教典

悪の教典 上

悪の教典 上

悪の教典 下

悪の教典 下

 生まれつき他者に共感する能力が欠損しているため、他人を「殺す」ことにためらいを持たない男が「面倒見がよく頼りがいのある先生」の仮面をかぶり学校を裏から支配する、という話。
 この主人公、短気を通り越して脊髄反射的と言っていいほど行動に迷いがない、何もかもが唐突な人物である。クールな天才という設定にもかかわらず、気に入らなければ即排除、その気になったら即性交、というマジもんの狂犬。
 話の展開上、なんか後々敵対しそうだなってフラグが立ったキャラがいたとしよう。普通の作品なら対決のシーンを盛り上げるために相手の見せ場を作るところだが、この『悪の教典』は違う。フラグを立てた数ページ後には主人公の真珠湾並みの電撃的な闇討ちを受け、そのキャラはなすすべもなく排除されてしまうのだ。それが、どんな強キャラ良キャラであろうとも。
 実際、ラスボス然としていた人物がやっと動き出したと思ったら、その日のうちに主人公からブラックジャックの一撃を受けて地面に転がる展開には、茫然とさせられた。

 そんなんだから、下巻に入るころには大した敵の存在は無く主人公にとっては完全に人生イージーモードという、驚きの状況に。主人公のキャラを活かしたがゆえに物語が死ぬという、なんか色々ともったいない一作。