異次元を覗く家

 ウィリアム・ホープ・ホジスン著/団精二訳 ハヤカワSF
まさに怪奇SFという名にふさわしい作品でした。薄暗い森の奥深くに建てられた巨大な廃墟、その瓦礫の中から発見された手記には、かってその廃墟で暮らした老人の異様な体験が記されていて・・・というすじ建てはまさに怪奇のものに他ならないのに、起こった怪異である、己の精神が宇宙に飛び立ち遥か彼方の異世界へ旅するところや時間が加速し一気に太陽系の終末まで見てしまうところなどに現れている圧倒的イメージはSFのものに他ならない。この作品が書かれたのは1908年ということだから約100年も前のものということになるんですが、そんなに前にこのイメージを描けたことが不思議でしょうがないです。それほど科学の面に明るいわけではありませんが、加速された宇宙の動きなどは僕の目から見てもその描写のリアルさは目をひきます。また、そんな科学的なところを取り入れながらも、怪奇の持つ雰囲気を壊すことなく引き立てていて・・・もう、すごい、の一言。