怪奇と幻想②

 ロバート・ブロック他著/仁賀克雄編 ハヤカワNV
復刊を記念して読みました。久々の怪奇ですね。
といっても、この②は全体としてゴシックな怪奇は少なく、SFやモダン・ホラーの香りが強かったです。面白いんですが、怪奇から脱出し他のジャンルに移行していく流れを感じられて、なんとも切ないアンソロジーでした。
とくに面白かったのはシオドア・スタージョンの「それ」、クリフォード・D・シマックの「埃まみれのゼブラ」、ディビット・イーリィの「裁きの庭」ですかね。「それ」は典型的なモンスターもので、技術的なうまさはあれ、すじとしてはありふれたものなんですが、最後の3行にスタージョンの底意地の悪さが集約されています。読んでいて思わず「ひでぇ!!」と言ってしまいました。シマックは怪奇でも幻想でもなくユーモアSF。軽妙な語り口が魅力の作品で、たしかにゴシック怪奇ではこういった軽い感じのユーモアは味わえないなぁ。『裁きの庭』はこのアンソロジーには珍しいまっとうな怪奇。作中に出てくる絵画の描写がなんとも不気味でいいです。その他にも毎回SFや怪奇のどのアンソロジーにも入っているけれど、どれもあんまり面白くなかったレイ・ブラッドベリの作品が面白かったり、当時のモンスター映画を下地にしたレイ・ラッセルの「宇宙怪獣現る」も予想以上に深みのある作品。。ストレートに怪奇ではないけれど、収穫の多いアンソロジーでした。
ちなみに、先頃復刊された本書の新しいカバーはやはりかっこよかったです。うらやましいなぁ。