愛のゆくえ

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

人の一番大切な思い出を綴った本だけを保管している奇妙な図書館に3年間外に一歩も出ずに住み込みで働いていた男が、本を納めに来た女性と恋に落ち、妊娠させてしまったので一緒に遠出して中絶に行く話。
『西瓜糖の日々』で「死」をも淡々と書ききった作者なので、この作品でも「妊娠・中絶」という重いテーマを日常の生活を書くように起伏なく描いています。ただ、不思議なことに『西瓜糖の日々』で感じたような静かな「死」や「停滞」のイメージは感じられず、人物たちの行動やラストの展開には前向さすら感じられました。途中にコミカルな描写があって、全体的に話の運びが明るかったせいかもしれないけど。
ただ、僕はやはり『西瓜糖の日々』の方が好きです。