インド夜想曲

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

長編というより中篇の長さです。
失踪した友人を探すためインド各地を周るという物語。
友人を尋ねて男は、娼館、精神病院、寺院、ホテル、と幾つもの不思議な場所に行き、様々な人に出会いますが、いつも友人は先にそこを発っています。書き方が上手いせいか展開はあまり起伏はないのに話しにどんどんのめり込んで行けます。しかし、物語に流されるがままにのめり込み、探す男に視点を合わせてしまうと、最後の最後に作者からの不意打ちを食らうことになります。作品の雰囲気は随分違いますが、この最後のひねり方というか意地悪さはクリストファー・プリーストの「魔法」に似ている気がしました。
僕はしっかり不意打ちを食らってしまいましたが、それを食らった後で再度物語を考え直してみると、尋ねた場所・人物の一つ一つに作者にとっての意味が見えてきます。娼館に精神病院ねぇ・・・。