幻想と怪奇3

ついに最終巻となった『幻想と怪奇』シリーズですが、今回は1・2巻の時よりSF色が薄かった気がします。入っている作家はSF作家が多いんですけどね。
フレドリック・ブラウンレイ・ブラッドベリの作品は両方とも、この人こんな作品書けたんだ、という意外な内容。ブラウンの遺作「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はユーモア抜きの音楽家を題材にした怪奇、ブラッドベリの「死人使い」は少しグロテスクな作品でした。意外と言えば前巻に引き続きオーガスト・ダーレスの作品「もう1人の子供」がなかなか面白かったです。この作家はクトゥルフなしで怪奇を書かせると、子供時代の思い出を扱ったノスタルジックな作品を書くようです。
特に良かったのは「墓碑銘」と「週末の客」。この一作意外作品が見つからないというブラッドリィ・ストリックランドの「墓碑銘」は途中で落ちが分かってしまいましたが、幽霊の持つ悲哀をよく引き出した作品でした。レスリー・ポールス・ハートレイの「週末の客」はその徐々に恐怖の迫りくる様子と、奇想さが非常に良かったです。
最後に、編者の結びの言葉でもあるものかと期待していたんですが、なかったのが残念です。復刊版には新しく解説でも載っているんでしょうか。気になるところ。