みんな行ってしまう

みんな行ってしまう (創元SF文庫)

みんな行ってしまう (創元SF文庫)


帯に「哀感と郷愁に満ちた傑作12編」などと書いてありましてが、この「哀感と郷愁」なんて言葉は客寄せパンダみたいなものです。宣伝部がもうちょっと正直ならこの下に「悪意」と入れているはずです。
まず、最初の「みんな行ってしまう」と「地獄はみずから大きくなった」はとりあえずいい話。「哀感と郷愁」で収まる範囲です。ただ、「あとで」から少し雲行きが怪しくなり、「死よりも苦く」と「家主」までいくとこの作家がたちの悪いやつだということを確信させられます。で、「見知らぬ旧知」で駄目押しです。
この作家の書く話は大体同じ展開です。前半部分は順調に行かせて、途中で突然に馬鹿馬鹿しいほどのひっくり返し方をして読者が困惑している間に話を終了させます。で、ひっくり返した後は大体ろくなことにはなりません。キチガイか不幸が残るだけです。
作者もたちが悪いですが、編集者も食わせものです。
・・・面白かったですけどね。