酒仙

酒仙

酒仙


ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』やアーサー・マッケンの『輝く金字塔』など、英米怪奇の翻訳・研究家として活躍している南條竹則氏ですが、作家としても何作か本を出しています。本書は氏の作家としての出世作
内容は・・・主に酒、間に肴、端々に教養を散りばめた現代ファンタジーです。
主人公はもちろんのこと、主人公のお付きの人、ヒロイン、ラスボス・・・出てくる人は誰も彼もが酒好きで、始まりも酒だし終わりも酒。話の中心となるのももちろん酒。
とにかく話のどんな場面でも酒を飲み、肴を食う。しかも、それがまた何とも美味そうに書かれていて、読んでるとこっちの腹が減ってきますし、なにより酒が飲みたくなってきます。あぁ、飲みたい食べたい。
それに加えて、話の端々に出てくる、東西の文学・哲学・宗教などの知識も豊富で、それが、酒の事に巧く絡めているんだからなんとも粋な感じです。
怪奇の面影はほとんどありませんが、これはこれですごく楽しい作品でした。

そういえば、11月11日に同氏編集の『イギリス恐怖小説傑作選』がちくま文庫から出るそうです。楽しみです。