怪奇探偵小説名作選5 橘外男集


昭和初期の怪奇作家・橘外男の短編集です。
中は「海外実話編」と「日本怪談編」に分かれていて、前者は海外を舞台にし、怪奇はもとより冒険・ミステリーなどの要素を盛り込んだ作品を、後者は名前にままで、「逗子物語」のような日本が舞台の怪談をまとめたものになっています。
しかし、全体を通して読んだところ、どうも人物像の粗さが目立ちました。皆すべからく封建的な考えの持ち主で、かつ台詞が大仰なのもあってどうも共感できません。なんというか、橘外男という作家は人物を想像するのが下手なのではないでしょうか。自分とキャラの距離が遠くなればなるほど粗さが際立ってきます。特に「海外実話編」で描かれている女性ともなると、なんだかもう阿呆にしか見えないような人ばかりでした。
「日本怪談編」では、その封建的な考え方は時代劇というフィルターを通してなんとか飲み込めるようになっていますし、台詞も地に足がついていました。「海外実話編」よりこちらの方が面白いです。これだけで固めてくれた方がよかったのに・・・。