四畳半神話大系

四畳半神話大系

四畳半神話大系


ファンタジーノベル大賞受賞作『太陽の塔』の作者・森見登美彦の2作目です。
あいもかわらず、主人公は非生産的且つ非社交的な生活を送る大学生。主人公の尊大そうで、尚且つ誇張されたような独特の語りで進められる物語の書き方も健在。嬉しい限りです。
物語は4話構成。
主人公が入学したばかりのころにどれにはいるか悩んだ4つのサークル。4つの話はそれぞれ、その時主人公が選択したサークルの違う平行世界の物語になっています。
恐ろしいのは、どれを選んだところで、大学3年になった時の主人公が、異性との付き合いも無く、学業を諦めていて、友達も少ないのは全く変化していないことです。どの選択をしたところで、主人公は変われずに、「あの時、他のサークルを選んでいれば・・・」と後悔しているのです。
この構造に気づいたとき、思わず笑ってしまいましたが、考えてみればこんなに恐ろしいこともありません。どれを選んだところで自分は自分であり、変化なんてない。これが、他の作品で語られているのならば、ただ、ふーんと思うだけですみますが、自分と重なってしまうよう主人公と舞台をもったこの『四畳半神話大系』では・・・僕もそうなのだろうかと考えずにはいられません。
話の構造も、言われていることも、あまり目新しいものではないように思いますが、設定がわが身に近ので、受ける衝撃の度合いが全然違います。雰囲気は軽くて笑える作品なので、まだ耐えられますが、これでノアールなんて書かれた日には首をくくってしまうかもしれません。