まっぷたつの子爵

まっぷたつの子爵 (文学のおくりもの 2)

まっぷたつの子爵 (文学のおくりもの 2)


イタリアの作家イタロ・カルヴィーノの≪歴史≫三部作の中の一作。
カルヴィーノは前に国書のイタリア幻想文学のアンソロジーで「アルゼンチン蟻」を読んだだけだったので、まともに一冊読むのは初めてです。
トルコ戦争の最中、敵の大砲によってまっぷたつに引き裂かれてしまい、極悪な≪悪半≫と正義の≪善半≫に分かれてしまった子爵の話。
≪悪半≫が物凄い残虐ぶりで、村人から恐れられるというのは当然なんですが、
≪善半≫もその行動が正しすぎて片割れ以上に鬱陶しい存在になってしまっているところなんか、
中々核心を突いていて、はっとさせられます。
他にも、まっぷたつになったことで≪悪半≫と≪善半≫が抱いたそれぞれの考えや、最後に訪れる二人の決闘のシーンなども、皮肉で、ユーモラスなのに、同時にそれが形を変えて我が身にも訪れかねないという怖さも感じさせられます。
寓話って、あんまりピンとこなかったんですが、なるほどこういうものなら大人も子供も楽しめるのかもしれません。