伝奇ノ匣1 国枝史郎


伝奇作家・国枝史郎の傑作集。
台詞とか時代がかっていて冗長で読みにくいんだろうと思っていたら、歌舞伎を思わせるテンポのよさと展開の早さに助けられ、飽きずにずーっと読める作品でした。
特に最初に作品「八ヶ嶽の魔神」は、展開の早さ・主人公の強さ共にスペース・オペラ並み。
秘剣・秘技を駆使して何十人も切り倒した後に、秘術を使って一気に体力を回復し、その足で更なる戦地へ向うその様は、こいつはレンズマンなんじゃねえかとすら思えます。
岡本綺堂のような、しみじみとした味わいはありませんが、痛快さを求めるなら非常に面白いのではないでしょうか。
ただ、最後の一作「レモンの花の咲く丘へ」だけは印象が異なり、オスカー・ワイルドの「サロメ」みたいな美麗で大仰な戯曲調の作品になっていますが。