真珠

教育実習で行っている中学校の図書館にマルケスの『百年の孤独』が所蔵されています。
勿論、中学生でラテン・アメリカ文学に手を出す人間など皆無なので、『百年の孤独』が背負った貸出票には、一人の名前すら書かれていません。
いつからそこにいるのかは分かりませんが、誰にも触れられない『百年の孤独』は、誰の目にも止まらない、棚の一番下の列の隅っこに追いやられていました。
おそらく、今後とも彼を借りていく生徒はいないでしょう。
いっそのこと、さらって来てしまおうか。