真夜中の檻

真夜中の檻 (創元推理文庫)

真夜中の檻 (創元推理文庫)


平井呈一の小説が読めるのは東京創元社だけ!
とは言え、正直それほど面白くなかったです。
表題作の「真夜中の檻」は、平井先生が大好きだったという「オトラント城」と「パンの大神」の影響が如実。舞台は日本家屋だけれど、ゴシック小説の古城の如き広くて重い感じの屋敷だし、途中の妖女と男が山深い場所で交わっているのを見てしまう場面なんかは、マッケンの牧神と人間が交わるイメージにそっくりです。舞台の描写などでは、はっとするようなところもあるけれど、全体として上記の二作家にちょっと引きずられすぎな感がありました。


あと、本書には小説の他に、数々の本で平井呈一が書いた怪奇小説に関する解説やあとがきがまとめられてします。英国怪奇の御三家はもとよりデ・ラ・メアやレ・ファニュ、ホイートリーなどなど、著明な怪奇作家に関しては大体揃っているのは嬉しい限り。平井呈一の解説は、ちょっと面白いものがあったから話してみる、という感覚の文章なので、堅苦しくないし読んでいて紹介されている作品を読んでみたくなります。小説よりむしろこっちの方が読んでいて楽しいです。ただ、それぞれバラバラの本のあとがき・解説なので、重複があったり、評論というほど深いものになっていないので、あしからず。