粘膜人間

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

 第十五回日本ホラー小説大賞受賞作。
 毎回地雷覚悟で読んできたこのホラー小説大賞であったが、一昨年の『鼻』らへんから風向きが変わってきて、去年なんかは日本ファンタジーノベル大賞の受賞作より、こっちの方が気になってしまった。二つの賞の方向性が変わったのか、はたまた僕の嗜好が変わったのか。

 『粘膜人間』はエログロナンセンス&スプラッタ道を引かず媚びず省みずに一直線に走り抜けた作品である。
 映画『乱歩地獄』や『双生児』なんかの悪夢のシーンだけを繋ぎ合せてひたすら流し続けたようなものだと想像してほしい。実際僕が読んでる時には、そんな感じで頭の中に映像化されていた。
 ただ、確かに視点をキャラクターに合わせていたら気持ち悪くて仕方がない話なんだけれど、一歩引いて、エロもグロも独自の世界観として見てみるとなかなかどうして面白い。平山瑞穂の『ラス・マンチャス通信』の読後感は、これに結構近い気がする。
 殺したり、壊したり、犯したり、騙したり、死んだり、憎んだり、蔑んだり…一般では遠ざけられる感情や状況を集めて煮込んで凝縮させるたものは、やっぱり普通じゃ絶対見られないものになる。見たことがないもの、隠されているものって言ったらやっぱり僕は見たくなる。多分、そういう好奇心だか助平根性だかが、こういう作品を僕に読ませるんだろう。

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